ミュージシャンの仕事はAIに奪われるのか問題
- サックス奏者 佐藤大地
- 2021年11月29日
- 読了時間: 8分
更新日:2021年12月6日
今回の話は別にタメになる話でもなんでもないんだけれども、こういう科学のお話とかってちょっとワクワクして好きなんで、語って見ようかと思います笑
AI(人工知能)が将来人間の仕事を根こそぎ奪っていく。
そんな噂があったりなかったりしていますが、果たして本当にそんな時代は来るのでしょうか。
色んな仕事があるので一概には言えませんが、ミュージシャンに限っていうと「AIなんて大層なもんじゃなくても、もうすでにカラオケの登場によって仕事は半分以下だよ!バカやろー!」っていうのが僕の思いです笑
それでもミュージシャンというものは生き残ってます。
ボーカルのバックの演奏の仕事の大半はカラオケに奪われましたが、それでもやっぱり生の人間の演奏というのは重宝がられるんですよね。
問題はコストだけなんです。
カラオケは一回音源を作ってしまえば、あとは電気代だけで動いてくれるんですが、人間にはその都度ギャラを払わなければならない。
あと人間はいい意味でも悪い意味でも全く同じ演奏っていうのは出来ないんですよ。
その日の体調や気分によっても左右されるし、ジャズみたいなアドリブの多いジャンルだと、年代によってプレイスタイルが変わる人もいる。
機械と人間にはまだまだ大きな違いがありますが、機械の方が安く、しかも24時間仕事をしてくれるという点では人間に勝っています。
では、今後この機械が発達していったらどうなるか。
AIというものの登場によってさらに仕事はなくなるのか、というのを語っていきます。
その前にまずAIってなんなの?
昔1809年に「ザ・ターク」という全自動でチェスをするロボットが発明されました。
なんとあのナポレオンにも勝ったそうです。
すごいですねー。
大昔にすでにそんな高度なAIを持つロボットが発明されていたんですねー。
はい…
当然ながらこのタークの中身は人間です笑
機械人形の下の部分に人間が入ってて磁石で動かしてます笑

で当時の人達はガッツリこれに騙されたんですよ。
当然、タークを疑う人もいたでしょうが、上の人形の部分には歯車がいっぱいつまっているし、技術者からこうこうこう言う仕組みなんですよー、って言われたら「へー、科学って進歩したんだなー」と納得しちゃうんでしょうね笑
まさかチェス板を置いてある机が本体だとは誰も思わなかったんです。
で、このターク君が人々に強烈なインパクトを与えたので、1970年代に入っても人工知能業界に影響を与えました。
何をもって機械が人間のような知性を持っていると判断するか、という条件の一つに「チェスが出来る」という条件が出来たそうなんですが、完全にターク君の影響です笑
チェスが出来ること、すなわち論理的な思考が出来るってことなんですよね。
もう一つ条件があって、それは自然言語を話せるかどうか、だそうです。
この二つが初期の人工知能業界でのいわゆるAIの定義だったんです。
(とはいえこれは一部のあいだでの定義です。学者さんによって定義はバラバラなので現在も明確な定義というのは存在しません)
で、1997年にはすでにIBMのディープブルーというスーパーコンピュータがチェスでプロに勝利しているんですよ。
つまり1個目の条件はクリアしているんですよね。
残るは自然言語を理解し、それを話せるかという部分です。
これが未だにクリアできてないんですよね。
象は鼻が長い
「象は鼻が長い」と聞いて皆さんはどういう意味だと思いますか?
当然「象」という生き物は「鼻が長い」生き物なんだ、って思いますよね。
果たして本当にそうですか?
では「私はビールだ」って聞いた時、皆さんはどう思うでしょうか。
「私」という生き物は「ビール」という液体なんでしょうか。
ビールが喋ってるんでしょうか。
違いますよね笑
ビールが喋っている可能性も捨てきれませんが、居酒屋とかで「私はビールだ」ってきくと「私はビールを呑むんだ」っていう意味が正解になりますよね。
では同じように「吾輩はビールである」と言うと、これもさっきと同じ意味です。
「私」が「吾輩」に変わっただけです。
単なる居酒屋等での注文の取り方です。
「吾輩は猫である」
では、この場合は「私は猫を注文しましたぞ!」っていう意味でしょうか?
………だんだん頭がこんがらがってきましたね笑
実は最初に出した「象は鼻が長い」というのは日本語学者の間ではめちゃくちゃ有名な問題です。
ここではこれ以上詳しくは書きませんが、日本語一つとっても主語がどうだとか、述語がどうのこうの、と複雑な問題が沢山あります。
なぜ我々はこんなのを平気で理解できるんでしょうね笑
人間とういものはその場の状況やれこまでの経験を元に言語を理解ましす。
上記の内容のうよに、「私はビール」と言れわてもその場の状況とこれでまの経験から「あっ、この人はビールを注文したんだ」と判断します。
さらに⬆︎の文章のように多少誤字があろうとも文章の意味を理解できるのは人間だけです。
一方現段階のAIというのは、言語を「理解しているフリ」をしているだけで、実は何一つ理解してないんですよ。
例えば、僕らの身近にある「Siri」だって全然言葉を理解していません。
試しにSiriに「私はビール」と言ってみましょう。

正直に「理解できません」と答えてくれました笑
「象は鼻が長い」でも試してみましょう。

こちらは言語学では有名な一説なので、その手の書物が出てきました。
ちなみに「歌って」というと歌ってくれます。

この「Siri」が歌ったりジョークを言ったりするのは、単に前もってプログラムされているから歌うだけなんですよ。
で、あとはネットを使って検索するか、理解できませんっていうか、iPhoneに入っているアプリと連動させて何かをするか(連絡先を聞いたり音楽を聞いたりカメラを起動したり)ぐらいのことしかできないんです。
「私はビール」と聞いてもウーバーイーツに連絡してビールを持ってきてくれるわけではないんですよ笑
ただし「ビールが飲みたい」と正確に伝えると「ビール」「飲みたい」という単語から判断して以下の画像のように案を提示してくれます。

賢いですが、所詮は単語を聞いて判断しているだけです。
それも、単語の意味すら理解はしていません。
あくまでも膨大なデータの中からその単語を検索して引っ張ってくることしかできないのです。
ところが膨大なデータというのがAI最大の強みでもあります。
「あれから」
2019年の紅白歌合戦の少し前から、色々と物議を醸し出したものに「AIが再現する美空ひばり」というものがありました。
何かって言うと、美空ひばりさんの歌い方や話方なんかをAIに学習させて、新曲「あれから」を歌わせる、って企画なんですよね。
YouTubeなんかで検索してもらったらすぐ出てくるんですけど、これ、全然違和感がないんですよ。
単なるデータの寄せ集めなので、歌詞の意味を理解していたり、曲を理解して歌っているわけではないので、美空ひばりさんのコアなファンが聞いたらどう思うかはわかんないですけども、少なくとも僕には普通に美空ひばりさんが歌っているように思えました。
で、今後このような技術がもっと進んでいって、誰もが気軽にAI○○を作れるような時代になった時、例えば、僕らでいえばAIパーカーやAIコルトレーンが作れるようになったら…
ぼくたちミュージシャンは果たして必要とされるんでしょうか?
もちろんミュージシャンの存在意義がゼロになることは無いと思います。
ですが、仮にもともとのミュージシャンの仕事量を100だとします。
それがカラオケの登場により、50くらいまで減らされてるんですよね。
その残った50の仕事をAIと分け合うとなると、よくて半々。
つまり僕らの仕事は25になるのではないだろうか。
もう一度言いますが、今のAIというのは単なるみせかけにしか過ぎないのです。
あくまでデータの寄せ集めであって、決して(現段階では)歌詞の意味や曲を理解していないのです。
それでも我々にとっては十分すぎるほどの脅威なのです。
今のジャズシーンを見ていれば結果は明らか
ここからは音楽全般ではなく、ぼくの専門分野であるジャズだけに絞って話をしていきます。
今のジャズ業界って殆どのミュージシャンはライブよりも、圧倒的にセッションやレッスンの方がお金になるんですよ。
これなんでかなーって考えたんですけど(ここからは完全に僕の個人的な考えです)、それは未だにジャズというものは過去至上主義だからなんですよね。
つまりどう言うことかっていうと、未だにジャズというものは大半の人達がパーカーやマイルスやコルトレーンやサッチモばかりを追いかけているんです。
別に個人の趣味だからそれは全然いいんですけど、新しいジャズミュージシャンを最上とする人が殆どいないんですよ。
だからジャズをしたい人はセッションやレッスンに行って「自分が演奏をする」ことを楽しむんだけど、「聴いて楽しむ」となるともはや過去の偉人が残したレコードなんかの音源でしか楽しめないんじゃないかと思います。
よくライブに行くよ!って人は今のミュージシャンも素晴らしいって思ってくれてるんでしょうけど、音源しか聴かない、ライブには行ったことがないっていう人の方が多いのが現状なんじゃないかと思います。
それはさっきもいった通り、今のジャズマンが何で一番儲けやすいかを考えて貰えるとわかると思います。
さぁそこでですよ!
「コルトレーンが新曲を引っ下げてライブします!」となったらどうなるとおもいますか?!
当然そっちにいきますよ。
僕だって見てみたいですもん笑
いまのAIならそんなこともおそらく可能なはずなんです。(完成度は置いておいて)
演奏は見るものではなく自分でプレイして楽しむというスタイルの人がより増えると思います。
もちろん、それが良いか悪いかは僕には判断できませんが…
少なくとも僕の仕事はより減ることは間違いないと思います笑
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